人種差別を違法とした上で高額賠償を認めた判決例

本件はインターネット上のヘイトスピーチについて、人種差別そのものを違法とした上で、高額な賠償を認めた画期的な判決です。

これまでも人種差別を理由に高額賠償を認めた判決はいくつかありました。たとえば、京都朝鮮学校襲撃事件に関する2013年10月7日判決(判例時報2208号74頁)等は、人種差別撤廃条約を援用して高額賠償を認めた例ですが、これは、「わが国の裁判所は,単に人種差別行為がされたというだけでなく,これにより具体的な損害が発生している場合に初めて,民法709条に基づき,加害者に対し,被害者への損害賠償を命ずることができるというにとどまる。」とした上で、「人種差別撤廃条約上の責務に基づき,同条約の定めに適合するよう無形損害に対する賠償額の認定を行うべきもの」として、賠償額の算定について人種差別を考慮する、という姿勢に止まっていたのです。

この点、本件で横浜地方裁判所川崎支部の2020年5月26日判決は、インターネット上のヘイトスピーチについて、以下のように述べて、人種差別そのものを違法とした上で、70万円の慰謝料を認定し画期的なものになりました。

(このような言動は)「憲法13条に由来する、住居において平穏に生活する自由に活動する権利、名誉、信用を保有する権利等の人格権を享有するための前提として強く保護されるべき、本邦外出身者が専ら本邦の地域社会から排除されることのない権利のみならず、上記の本邦外出身者がそれぞれ有する自らの出身国等の属性に関して有する名誉感情を著しく害する」

さらに、2021年5月12日の東京高裁判決は、慰謝料額を増額し、100万円の慰謝料を認定しました。1つの書込みにたいする慰謝料額としては、異例の高額であるといえるでしょう。

今後、この流れを確実なものとすべく、判決全文を以下に公開するものです。

第1審 判決文_横浜地裁川崎支部 平成31年(ワ)第190号

控訴審 判決文_東京高裁 令和2年(ネ)第2495号

弁護士 神原 元