#KuToo本裁判の全て

石川優実さんは、2017年に自身が芸能界で受けた性暴力を社会に告発する等して女性差別社会を厳しく批判してきた勇敢なフェミニストです。また、石川さんは、2019年には職場でのパンプス義務付け反対運動「#KuToo」を展開、世界中のメディアから取り上げられBBC「100人の女性」にも選ばれました。
ところが、石川さんの活発な活動に対して女性差別主義者たちは猛烈に反発。日々Twitterなどで石川さんに対する根拠のない誹謗中傷を繰り返しました。石川さんは、これに対する反論を本にまとめ、2019年10月「#KuToo~靴から考える本気のフェミニズム」(株式会社現代書館)という書籍の形で出版しました。
すると、「この本は著作権法違反である」等という根拠のない言いかがりが、インターネットに多数投稿されるようになりました。専門家が見れば一笑に付すような内容でしたが、Twitterにおけるバッシングは止まりません。そして、ついに、2020年8月、ツイートを引用された男性から、著作権法違反を理由に出版差止等を求める訴訟が提起されたのです。
私たち弁護団は、提訴自体が石川さんに対する根拠のない誹謗中傷の延長であり、女性差別社会からのバックラッシュと捉えて、断固たる姿勢で裁判に臨みました。2021年5月26日、東京地方裁判所は、男性の請求を理由なしとして全て棄却しました。翌2022年3月29日、東京高等裁判所も一審を支持。男性は上告していますが、我々弁護団としては、大筋で勝訴は決まったと考えています。
それでも、インターネットでは石川さんに対する誹謗中傷は止みません。とりわけ弁護士層は女性に対する奢りと偏見が強く、石川さんを執拗に攻撃する論調が続いているようです。しかし、彼らは、一体裁判をどの程度理解しているのか。

-2023年6月14日追記-
前記事件の判決は、2022年9月29日、最高裁判所で確定しました。
その後、石川さんは、KuToo裁判の原告であった「はるかちゃん」に対して、別件で損害賠償請求の訴訟を提起し、東京地方裁判所は、2023年2月16日、「はるかちゃん」に対して賠償金の支払いを命じる判決を下しました。
さらに、石川さんは、KuToo運動に関連して石川さんを誹謗中傷した「青識亜論」と名乗る徳島県在住の男性に対して名誉毀損訴訟を東京地方裁判所へ提起し、2023年6月13日、勝訴判決を得ました。
これでKuToo裁判は全て石川さんが勝利したことになります。

ここでは、石川さんへの根拠のない誹謗中傷に終止符を打つべく、裁判における双方の主要な主張を公開し、原告の訴えがいかに根拠のないものであったか、明らかにしたいと思います。また、石川さん自身がお書きになっているものも、併せて公開したいと思います。

弁護士 神原 元

*裁判記録及び石川さん執筆記事は以下のリンクからご覧ください。

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裁判記録

訴状【東京地方裁判所(1審)・令和2年(ワ)第19351号】

答弁書【東京地方裁判所(1審)・令和2年(ワ)第19351号】

1審判決【東京地方裁判所(1審)・令和2年(ワ)第19351号】

控訴状【知的財産高等裁判所(控訴審)・令和3年(ネ)第10060号】

控訴理由書【知的財産高等裁判所(控訴審)・令和3年(ネ)第10060号】

控訴答弁書【知的財産高等裁判所(控訴審)・令和3年(ネ)第10060号】

控訴審判決【知的財産高等裁判所(控訴審)・令和3年(ネ)第10060号】

上告事件【最高裁判所(原判決・知的財産高等裁判所(控訴審)・令和3年(ネ)第10060号)】

「はるかちゃん」事件【東京地方裁判所・令和3年(ワ)第29463号】

「青識亜論」事件【東京地方裁判所・令和3年(ワ)第29453号】
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石川さん執筆の記事

第1回 ネットリテラシーの罠

第2回 この裁判自体が性差別への抗議に対するバックラッシュ

第3回 へんてこりんな日本語読解が認められるかどうかが実質的な争点だったこと

第4回 謎の「クソリプ定義論」

第5回 女性差別を理解しない限りバックラッシュは続く